2009年10月08日

69.影 


ものかきさんに100のお題。】『69.影』
「身代わり伯爵」シリーズよりリヒャミレです。


駄文な上に短めですが…よろしければ「続きを読む」からどうぞ。


 心地よい秋晴れの太陽も傾きはじめ、空はきれいな橙に焼けていた。
 アルテマリスの王宮、シャンデルフィール城でも、いつもと変わらぬ穏やかな一日が過ぎようとしていた。
「ん〜、今日はほんとにいい一日だったわ。いつもと違って騒動のその字もなかったし」
「そうですね」
 広い城の庭を横切りながらうんと伸びをするミレーユに、隣を歩いていたリヒャルトも穏やかに頷いた。
 日中は、秋だというのに輝く太陽が、肌を地味に焼くほどだったのだが、空を染めるようになった今では、寒いくらいの冷たい風が吹いている。
 早くも枝を手放した葉が飛んできて、ミレーユはそれを目で追い、ふと思いついた。
「そうだっ!もう少し落ち葉が多くなったら、みんなで焼きいも大会しない?」
 元気よく発せられた言葉に、半歩後ろを歩いていたリヒャルトはびっくりしたようにミレーユを見た。
 突然発した声にというよりは、内容に驚いたようだ。
「焼きいも大会…ですか?」
「うん。こんなに木がたくさんあるんだから、きっと大量の落ち葉が手に入るでしょ?」
「ああ…毎日掃いてあるので気に留めたこともありませんでしたが…」
 考えてみるとそうですね、とリヒャルトは可笑しそうに笑った。
「何がおかしいのよ」
「いえ…もしかしてサンジェルヴェの方でも、秋に落ち葉で焼きいもをしていたんですか?」
「そうよ。うちだけじゃなくて、あちこちでね」
 その様子を思い出して、リヒャルトの笑みに憮然としていたミレーユの口元が、自然とほころんだ。
「みんなが一斉に、毎日のようにやるものだから、街がちょっとけむたくなっちゃって、個人でやるのは禁止されちゃったのよ。代わりに地域ぐるみの行事になって、毎年その日になると、みんなこぞって庭掃除をするの」
 その言葉をたどって想像したリヒャルトも、自然と笑みをもらした。
「地域ぐるみ…楽しそうですね」
「そうなの、すっごく楽しかったわ!だから王宮のみんなでやったらきっと楽しいと思うんだけど…リヒャルトはどう思う?」
 そう言って向けられた顔は夕焼けに照らされていて、リヒャルトには一瞬、地域行事にはしゃぐ幼いミレーユが重なって見えた気がした。
 もちろんそれはリヒャルトの想像で、幼いミレーユを自分が知るはずもない。それなのにその姿は不思議と鮮明で、まぶしくみえた。
 いつだって彼女は明るい光のように清らかで、まっすぐに生きている。
 それがたまらなく愛しかった。
 思わず頬に触れたくなるのをこらえて、リヒャルトはこらえきれない愛しさを含んだ微笑みを向ける。
「俺も、楽しいと思います」
「じゃあ決まりね!そうと決れば早速準備よね。いろいろ企画しなくちゃ」
 以前、肝だめし大会の計画をたてたことで自信がついたのか、ミレーユは気合いを入れるように両手を握ってガッツポーズをしている。はちまきまでしめてしまいそうな勢いだ。
 半歩先を行く小さな身体から伸びる影が、リヒャルトの隣におちて、そのまま自分の影と重なっている。
 こんな些細なことにしあわせを感じるようになるなんて、少し前の自分には考えられなかったというのに。
「ねえリヒャルト。あたしたち以外に呼ぶ人は、まず白百合騎士団でしょ、セシリアさまでしょ、ジークとリディエンヌさま、ヴィルフリートさま、ルーディ…。それからシルフレイアさまにも招待状出してもいいものなの?これって正式な招待になっちゃうかな」
 不意に振り返ったミレーユは、指折り数えてみせてから首を傾けてリヒャルトを見上げた。ミレーユの影は、今度はリヒャルトの足にかかっている。逆光で顔ははっきり見えないのに、不思議と声から、ミレーユがどんな表情をしているのかわかる。
 ずっと、影が重なるほど近くにいられたら…
「その前に両陛下にお話して許可を仰がないといけないと思います。その際にシルフレイアさまのことも申し上げてみては?」
「あっ、そうよね。どちらにしても謁見よね…」
 ミレーユは戸惑ったようにつぶやいて、やがて、泳がせた目を再びリヒャルトに戻した。
「じゃあリヒャルト、一緒に来てくれない?別にあの、国王陛下が怖いわけじゃなくて、だってパパのお兄さんだし。じゃなくてそのっ、ほら、相手は国王さまなのよ、緊張するでしょ?」
 まだ何も言っていないのに、しどろもどろに言いわけする彼女に倣って、影もふにゃふにゃと動く。動いて、リヒャルトのそれと重なっては、ずれるのを繰り返す。
 まるで、自分の気持ちのようで。
 夕焼けでも隠せないほどあわてているミレーユをみて、リヒャルトはついまた笑ってしまう。
「いいですよ。俺も準備を手伝います」
「ほんと!?」
 ぱっ、と反応良く上がる嬉しそうな返事が嬉しくて、止まっていた歩を進めると、また影が重なる。
「だからもうサロンへ戻りましょう。寒くなってきましたから、風邪をひきますよ」
「ありがとうリヒャルト、当日、おいも一本多くあげるわね!」
「それは…ありがとうございます」
 軽くミレーユの背を押して促すと、今度は並んで歩き出す。
 きれいに刈り揃えられた芝生に並ぶふたつの影法師は、少しずつ伸びて、城の影と重なって見えなくなった。

 願わくは、ずっと隣で。




                       〜END〜





駄文失礼しました(;´∩`)イメージとしては、『挑戦』の後あたりかなぁと…明確ではないんですが。
 始めはミレーユ視点の予定だったのが、いつの間にかリヒャルトへ…ベタボレの上に乙女なやつになってしまいました…リヒャルト、キャラ崩壊ですみません…。しかもミレーユはまた食べ物の話……色気より食い気か!!(笑)
 離れなきゃ、距離を置かなきゃと思うのに、近くにいたいと思ってしまって手放せない。そんな、リヒャルトの揺れ動く気持ちを影に喩え…きれませんでした…。ああ、文才がほしい…。
明らか駄文なのに、最後まで読んでくださってありがとうございました!!
posted by 聖火 at 00:27| Comment(3) | 二次創作・身代わり | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
コメント一番乗り!の栄誉を頂きます。
影のお話、とっても良かったです。
よく設定を思いつきますね。
わたしはもうネタ切れです(笑)。
言われて、そういえば視点が移ってると気づきました。
自然に読めましたよ。

「告白」、最初に果たし状が来て、聖火さますごい!って心の中で叫びましたよ(笑)。

また参上します。
身代わり二次、宣言したイゼルス一人称つきのやつ書いてありますから、そのうちアップしますね。
試験頑張ってくださいね。
Posted by 桔梗 at 2009年10月08日 01:46
こんにちは。
今作も、とても楽しく拝読させて頂きました!

原作の『告白』ではシアラン編クライマックスに向け、
緊迫したシーンが続きますので、
久しぶりにほのぼのリヒ×ミレが見られて嬉しかったです!
やっぱり二人は一緒が良いです。
私も、ほのぼのリヒ×ミレが書きたくなりました〜(笑)。

「100のお題」頑張って下さい!
Posted by sakura at 2009年10月08日 14:45

返信が遅くなり申し訳ありませんでした;

>桔梗様
コメントありがとうございます!
私もネタ切れ気味ですよ〜…設定はお題から頂いてますw
本当ですか?よかったです!

私も、感想で書きましたが、きた!と思いました(笑)
パパ、ついに乗り込んで来ちゃいましたねw
でもジュリアさんはいましたね!桔梗様が言ったとおりだなと思って嬉しくなりましたv

イゼルス一人称、楽しみです♪
試験も頑張りますっ!

>sakura様
コメント有り難うございます!
そうですね、『告白』はいろいろ衝撃的でした…。
私も、ふたりは一緒にいて、笑っていてほしいと思います…。
緊迫した気持ちをすこしでも癒して頂けたなら本望です^^
ぜひぜひ書いてください!楽しみにしてますっ。

有り難うございます!
地道にこつこつupしたいと思っているので、よろしくお願いします。身代わりだけではなくなると思いますが…。

Posted by 聖火 at 2009年10月10日 18:08
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